ニュースリリース

日立健康保険組合
株式会社日立製作所

特定健診とレセプトデータから生活習慣病の発症率と医療費を予測するモデルを開発
2014年度より日立健保で試験的な導入を開始し、効果の高い保健事業の計画立案を推進

日立健康保険組合(理事長 : 御手洗 尚樹/以下、日立健保)と株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)はこのたび、特定健康診査(特定健診)や診療報酬明細書(レセプト)の情報を活用し、日立健保が保有する特定健診とレセプトのデータから、集団における将来の生活習慣病の発症率と医療費総額を予測するモデルを開発しました。日立健保の約11万人分のデータを用いて本技術の有効性を検証したところ、平均誤差5%で生活習慣病の医療費総額を予測できる見通しを得ました*1。日立健保では、2014年度から本モデルを試験的に導入し、将来の医療費予測をもとに、費用対効果の高い保健指導の導入など施策の検討を行っていきます。

近年、急速な高齢化と糖尿病や高血圧などの生活習慣病の増加に伴う医療費の高騰が社会問題になっています。このため、厚生労働省は、2015年度から全ての健康保険組合(以下、健保)が、健保が保有する特定健診やレセプトの情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防に取り組む「データヘルス」を推進することを決定しました。日立健保はこれまでに、特定保健指導の対象者に対して、日立独自の生活習慣改善・減量プログラム「はらすまダイエット」*2を活用した保健指導を実施し、参加者の体重減量や検査値の改善と同時に、参加者は不参加者と比較して医療費が低いという結果を確認しています*3。今後、このような保健指導の対象を特定保健指導以外にも拡大し、データヘルスを本格的に推進するためには、健保加入者全体における将来の生活習慣病の発症率やこれに伴う医療費の変化を高い精度で予測し、費用対効果を考慮した施策の検討や導入の判断が必要となります。
これまで生活習慣病の発症予測では、疫学研究や医療現場で得られた知見をもとに、疾病ごとの個別モデルを生成する方法が一般的に利用されてきました。生活習慣病では、各疾病が互いに影響しあい、重症化すると合併症を引き起こすことがわかっており、精度の高い予測を行うためには、疾病間の影響まで考慮した発症率予測とこれにもとづいた医療費予測が必要となります。

そこで、日立健保と日立は、日立健保が保有する複数年分のレセプトと特定健診のデータから、生活習慣病の疾病間の影響を考慮して、集団における生活習慣病の発症率と生活習慣病に関連する医療費総額を予測するモデルを開発しました。開発した予測モデルの概要は以下の通りです。

1. 様々な要因の影響を考慮した生活習慣病の発症率と医療費を予測
特定健診とレセプトデータに含まれる生活習慣病に関わる検査値(BMIや血糖値など)や問診結果(飲酒や喫煙、運動状況など)、傷病名や診療内容、診療報酬点など多数の項目について、データの経年変化を分析し、ある状態から将来どのような状態に変化するかを確率的に求めます。同時に、コンピュータがデータに潜むパターンや規則性などを自動で導き出す機械学習によって、例えばBMIと糖尿病など異なる項目間の影響度合いを求めます。これらの分析結果を用いて、様々な要因の影響を考慮した、集団における生活習慣病の発症率とそれに関わる医療費総額を予測するモデルを構築しました。
2. 実データを用いたモデルの有効性の検証
構築したモデルの有効性を確認するために、日立健保が保有する2010年と2011年の約11万人分のレセプトと特定健診データを用いて検証実験を行いました。実験では、11万人のデータを2グループ(A : 約9万人分、B : 約2万人分)に分け、Aグループの2年分のデータを用いて生活習慣病の医療費総額を予測するモデルを構築し、このモデルを使ってBグループの2010年のデータから2011年の医療費総額を予測して、2011年の実データと比較を行いました。その結果、予測値と実データの誤差は平均5%以内になり、一般的な手法である疾病ごとに構築された個別モデルを使って予測した場合の誤差約10%に対し、高い精度で予測できることを確認しました。

  日立健保では、今回開発した医療費予測モデルを活用し、データヘルスの一環として費用対効果の高い保健事業を推進する予定です。

なお、日立健保ではデータ分析において、特定健診とレセプトのデータを、個人を匿名化した上で活用しています。

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